生命保険を相続目線で考える-次期社長は生命保険が決める

前回の記事では、現預金の相続と比べ生命保険の相続活用の持つメリットについて説明しました。中小企業では、この生命保険による相続の特徴を生かし、後継者への円滑な「事業承継」を行うことができます。

生命保険の担う事業承継

前回と同じく、具体的な例を持って見ていきましょう。今回は会社です。
中小企業を経営するAさんは、長男のBさんと次男のCさんがいます。Aさんは長男Bさんに会社を継がせたいと考えています。

この場合、Bさんが会社を継ぐのにはAさんによる「次期社長はBだ」というお墨付きも大切ですが、それ以上に重要視されるのが「Aさんが所有していた株式」です。この株式を、Bさんが51%以上持つことにより、Bさんが次期社長として経営を担うことができます。

なぜ「51%以上」なのか。会社の株式を所有している人を「株主」といいます。株主は会社の重要決定事項を決める「株主総会」への出席権と、何よりも大事な総会中の意思決定による「議決権」があります。Bさんが51%株式を所有していないと、他の人間が結託して、「Bさんは社長に相応しくないから解任だ」という提案をして通ってしまいます。
Bさんが覚悟を決めて社長業を続けるためにも、この株式所有数はとても重要です。

兄弟が株を共有すること

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ところで、Cさんが株式を所有することの何がいけないのでしょうか。BさんとCさん、おそらく幼い頃から手をつないできた兄弟でしょう。ただ、これまでの日本の会社では、BさんとCさんに同等の株数を渡したがために、兄弟喧嘩となり、会社が衰退してしまった、という話が尽きません。

また、大人になると様々な人間から、様々な誘惑があります。「BさんではなくてCさんが社長になるべきだ」と唆し、企業内紛が始まってしまうのですね。

会社に生命保険をかけ、株式の代わりを準備する

そのために中小企業では、会社に生命保険をかけて現預金を準備する、という方法がよくとられます。保険金支払者は会社で、保険金の対象は現在の社長Aさんにします。そして保険金受取人をCさんにします。

Aさんが亡くなった時、Bさんには株式を、Cさんには株式の代わりに、生命保険金により会社に入った現預金を譲渡するのですね。

また、この保険の受取人をBさんにして、Bさんから株式の代わりにCさんに現金を換価するという考え方もあります。つまり、「次期社長は生命保険を使って決める」。とても大事な会社の事業承継における考え方です。

生命保険料は「損金」になる

生命保険金だけではなく、保険金を準備するための「保険料」も会社に対してのメリットがあります。それは、「生命保険料は会社の損金になる」ということです。

「損金」とはなんでしょうか。

損金とは、会社に対しての税金である「法人税」を算出する際の費用のことです。実際の会計上会社にかかったお金のなかでも、法人税としては「費用として認められない」ものがあります。これを専門的な言葉で「損金不算入」といい、一方で認められるお金を「損金算入」といいます。

会社の支払う生命保険料は、この損金に全額を算入することができます。これにより、生命保険料は法人としての費用になり、法人税の課税対象額を圧縮することができます。

次期社長を決めるだけではなく、損金としても活用できる会社加入の生命保険。実際に多くの中小企業では、この生命保険を活用することで事業承継が行われています。生命保険は、病気やケガに対する保障や、終身保険による貯蓄性のほかに、このように意外なツールとしても使えるものなのですね。